奥多摩-高尾 40km縦走 (失敗)

はじめに

この記事は散歩・徒歩・苦行 Advent Calendar 2023 9日目の記事です。

散歩・徒歩・苦行なんてほとんど人おらんやろ... とか思っていたら16枠も埋まっているので意味が分かりません。 本当にありがとうございました。

さて、曲者ぞろいの散歩・徒歩・苦行アドベントカレンダーですが、挑戦する方が少ないであろう「登山」に関するチャレンジを行ってきました。

奥多摩から高尾までを縦走する!」と意気込んだ山男2人が、志半ばで心折れる話をお話します。

プロフィール

私、Advent Calendar初執筆どころか、ブログ記事を書くこと自体が初めてなので、私が過去にどんな登山をしてきたかを軽く紹介します。

登山との出会い

小学生のころ、親に連れられて登り始めたのがきっかけです。 初手の登山から1泊2日、まだ片手の指で数えるほどの登山経験の時に八ヶ岳、富士山に連れていかれるなど、小学生にしてはハードな登山経験を積んでいました。 実は小学生の頃は登山が全然楽しくなかったのですが、ついに中学生のころに目覚めました。 あれは南アルプス北岳、日本で2番目に高い山に登った時です。中学生で身長も体力もみるみる増え、今まで辛く過酷だった登山が、まったく辛くなくなったのでした。

そこからはとんとん拍子で、高校、大学と山岳関係の部活動に所属し、最大7泊8日まで、長期縦走に挑むようにもなりました。 今まで様々な登山にチャレンジしてきた私ですが、その中の一つのチャレンジ縦走企画が、この「奥多摩-高尾40km縦走」なのです。

この企画は、2年前にもチャレンジしており、その時は体力不足+足の痛みもろもろで途中で脱落しまいました。総歩行距離は30kmと、初めてにしては大健闘でした。しかし、普段の縦走とは違い、1日で踏破しなければならないという制約がかなり厳しく、「体力は続くのか?」「日没前に踏破できるのか?」など、懸念事項がかなり多いことも分かりました。

今回はそんな2年前のチャレンジのリベンジ企画です。体力も胆力もさほど2年前と変わってませんが、今回は秘策があります

登山の概要

コース概要

出典:国土地理院ウェブサイト(https://maps.gsi.go.jp/)

企画名の通り、奥多摩から始まり高尾まで抜けるルートです。40kmあります。最初の6kmで最高標高点である三頭山に到達してからは、アップダウンを繰り返しながら徐々に下っていくルートです。

最初のほうは左手に東京都、右手に山梨県を眺めながら、県境をひたすら歩いていきます。途中から東京都-神奈川県境に変わります。 このルートは東京都の都境をひたすら歩くルートでもあります。

持ち物

行動食

今回の全食料です。だいたい4000kcal目安で購入しました。ちょっと多いですが、備えあれば憂いなしです。 ちなみに水は5L持っていきました。

熊鈴と熊スプレー

今回行く山域は熊が出るので、熊対策用品も持っていきます。熊スプレーは5000円くらいで買えます。皆さんも熊が出る山に行くときは買うことをお勧めします。

メンバー

今回は、自分含めて2人で向かいました。自分は登山歴13年、もう一人は登山歴5年の男で、お互いにそれなりに山に登っています。

さあ山に登るぞ

さて、秘策とは一体...

さて、秘策を発表します。それがこちら。

秘策(車)

協力者に早朝から奥多摩に運んでもらいます。

前回この企画を行ったときは、始発の電車とバスで奥多摩に向かったため、どうしても出発時間が遅くなってしまいました。そこで今回は、ラボの仲間を深夜1時に叩き起こして、奥多摩まで輸送してもらうことでこの問題を解決しました。

深夜なのに奥多摩まで運転してくれたラボの仲間たち

正直これを依頼したときは「絶対断られるだろ...」と思っていましたが、依頼したその日中に「いいよ!」と返事が来てびっくりしました。フッ軽すぎるだろ。

快く引き受けてくださったお二方、本当にありがとうございました。

登山口に到着

道中コンビニに寄ったり、引き返したりしつつ、午前4時半、登山口である麦山浮橋の北岸につきました。

麦山浮橋

この橋は奥多摩湖に設置された浮橋で、水の上にそのまま設置されている都合上、歩くと揺れます。割と揺れます。 ここで少し遊びたいところですが、今回の推定コースタイムは13時間。名残惜しいですが、ここは先を急ぐとします。

きれいな夜空を写真に収めて、ここまで送ってくれた2人と別れます。これから長く苦しい戦いになりますが、行ってきます。

満天の星空(iphoneで撮影)

登山開始

午前5時、ゆっくり歩き始めます。 この時の気温は5度前後、防寒対策はしっかりしているので寒くはありませんが、水は冷たいです。 湿った落ち葉の上を歩きながら、まずは最高標高点の三頭山を目指します。

最初の道標

三頭山登山口まではちょっとした登山道+アスファルトの舗装路でしたが、三頭山登山口を過ぎると本格的な登山道に変わります。

三頭山登山口から少し先

暗い中、ヘッドライトの明かりを頼りに、どんどん進んで行きます。

歩き始めて1時間。ようやく日が昇ってきた。

午前6時を過ぎると周りはどんどん明るくなっていきました。と同時に、風が吹き始めてきました。 この日は強風に注意という天気予報が出ていましたが、その予報は見事に的中したようです。

防寒着に身を包みながら歩き、とりあえず一つ目のピークであるイヨ山に到着しました。

イヨ山(979m)

特に面白いピークでもないので、そのまま休憩せずスルーして次のピークに向かいます。 午前7時、あっさりとヌカザス山に到着しました。

ヌカザス山(1175m)

「糠指」って書くのか... と変な関心をしていたところで、今日1回目の休憩。お腹がすく前に適当におにぎりを食べます。 これは大切なことですが、空腹が続くと急に歩けなくなる時が来ます(過去に一度やらかしました)。空腹を感じる前に、エネルギーをちゃんと補給しておきましょう。 塩分補給も大事です。

霜が降りていた

巨石の間を歩く

最高標高点、三頭山

晴天の寒空の中、登山口から歩くこと3時間。ついに三頭山に到着しました。

三頭山(1524.5m)

天気が良すぎる。そして、山頂から南西を眺めると...

圧倒的富士山ビュー

「すげぇ~!」

そこにはでかすぎる富士山があるのでした。たぶん今日一番の景色です。 秋~冬登山の一番の醍醐味は空気が澄んでいて遠くまでよく見えることです。この日は本当に天気に恵まれていたので、とてもきれいな富士山を見ることができました。

しかし、強風。稜線沿いや山頂は風の通り道になりやすいため、寒いです。それに、今日はただ歩きに来たわけではなく、ここから34km先の高尾まで歩こう、と言っているのです。まだまだ1/6にも満たないのです。狂ってるのか。気持ち的には達成感に満ち溢れていますが、写真撮影はほどほどに、さっさと次のピークを目指します。

笹尾根に向かう

三頭山避難小屋

ちなみに、この辺の道は都民の森の管轄下らしく、非常に整備されており歩きやすかったです。同行者のT君は、ここまでの道について「落ち葉が歩きにくすぎる」と文句を垂れ流していたため、都民の森の整備具合に感動し「天才すぎる」と感謝の言葉を述べていました。

都民の森の終わりの分岐点

そんな都民の森もあっという間に終わり、またいつもの登山道に戻ります。

槇寄山(1188m)

槇寄山に到着し、小休止。ここまで早朝すぎて誰ともすれ違いませんでしたが、この場所で初めて登山者とすれ違いました。 ちなみに、山頂につくと達成感でつい休憩したくなってしまいますが、山頂は軒並み風が強いです。本当はこういうところで小休止はしないほうが良いです。

なんてことない分岐点

そして、歩き始めること12km、ここで初めてのルートミスをします。 この分岐にて、本来は笛吹峠・浅間峠に向かうべきでしたが、三頭山から道なりにそのまま上野原町藤尾に降りてしまいました。幸い、100m程度間違ったところで気づきましたが、もう少し進んでいたら心が折れていました。正直、この看板自体見落としていました。ただ、「あれ?なんかこの道おかしくね?」の直感はここ数年でめちゃくちゃ鍛えられた気がします。高校生の頃は、間違ったまま2kmくらい進んで絶望したこともありました。大学生になってやり始めたバリエーションルートの地形読みの成果かもしれません。

丸山(1098m)

土俵岳(1005m)

読み方が謎の看板

特に見晴らしもよくない山頂をどんどん進んで行きます。 この辺は特に景色も面白くないので、ずっと同行者Tと就活の話をしていました。

左手は東京都、右手は山梨県

浅間峠到着。ここから後半戦。

浅間峠

浅間峠にてちょうどよい休憩場所があったので、ここで10分の長めの休憩を取りました。 ハイドレーションに水を補給したり、エネルギー補給をします。 ちなみに、この地点での歩行距離は18km。普段の日帰り山行だったらもう終わりの距離ですが、まだ半分にも到達していません。時刻は既に12時半。この地点でかなり絶望しています。

エスケープルートは無限にあるからと、とりあえず行けるとこまで行ってみようのマインドで、進んで行きます。

改行位置が少し変な看板

少し絶望する長さの登り階段

このあたりで、登り坂が現れると「まだ登るのかよ!」とキレ始めていました。ちなみに、今回の予定ルートの獲得標高は約3200m。最高標高点を過ぎたからって、ずっと下りなんてことはありません。 アップダウンを繰り返しながら徐々に下っていくのです。タチが悪いな...

同行者Tは心が折れないように音楽を聴き始めていました。Vaundyのアルバムを選んだようです。

道標のついでに書かれている熊倉山(966m)

軍茶利山(多分、「ぐんだりやま」と読むはず)

軍刀利神社元社

少し歩いたところで、軍刀利神社元社につきました。こんなところに神社あるんだ。 山梨県側に下った先に、もっと立派な神社があるそうです。

三国山(960m)

ここは三国山とありますが、三国峠とも呼ばれています。山梨県と神奈川県と東京都の3県境になります。三国峠と呼ばれる地名は全国にありますが、三国峠と聞くと私はまず群馬-新潟県境の三国峠を思い浮かべてしまいます。 ちなみに、同行者TはVaundyのアルバムをすべて聞き終わったようです。早かったな。

生藤山のまき道を示す看板

この先の山々はまき道も整備されており、度々その誘惑に誘われました。しかし、今回はチャレンジ企画。まき道はご法度です。 重い足を何とか持ち上げて、小さなアップダウンを歩んでいきます。

生藤山(990m)

生藤山東峰(岩にマジックで直書き)

まき道に行きたい気持ちを抑えつつ...

茅丸(1019m)と富士山

浅間峠にいた頃は曇って太陽が見えていませんでしたが、ここで久々にちゃんと日の光を見ました。 太陽光を浴びてエネルギーをチャージします。このあたりは小さなピークが多いです。連行峰、大蔵里山を通過しました。

連行峰(1016m)

午後3時、諦めの時

午前3時を回っているのに、まだ陣馬山にも辿り着いていませんでした。

午後3時前、日がかなり低くなっている。

陣馬山は今回の山行のだいたい2/3地点です。陣馬についてもまだ高尾までは13kmほど残っています。そんな陣馬山までもまだ3km以上ある状況でした。 ここで悟ります。無理だこれ

同行者Tは靴ずれを起こし、足からは出血していました。(のちに分かったのですが、自分も靴ずれで少し出血していました。)

靴ずれ箇所の保護をしながら、エスケープルート会議

俺「とりあえず高尾までは不可能だね、日没前に陣馬までは行けるかな?」

同行者T「せやね、一応陣馬山だけ踏んで帰るか」

そんな会話をして、とりあえず陣馬山までは頑張ろうということになりました。

余談ですが、この会議をしているところで、別のルートから一人のトレイルランのおじさんがやってきました。

トレイルランおじさん:「こんちは~! どこまで行くん?」

俺たち:「いや~高尾まで行こうと思ってたんですけどさすがにギブアップでとりあえず和田峠まで行きます」

トレイルランおじさん:「そうなんだ、お疲れ様~」

俺たち:「ちなみにどこまで行くんですか?」

トレイルランおじさん:「高尾まで行くよ!

俺たち:「!?

トレイルランおじさん:「実は今日御岳山から来たんだよね~

俺たち:「??????

御岳山からのルートは、今回選択したルートと負けず劣らず長いルートになります。 ここまでも20km以上歩いて(走って)来たはずなのに、この時間から高尾まで行こうという胆力がすごすぎます。 私たち大学生はトレイルランおじさんの体力に大敗北しました。

無事、下山

陣馬までは行こう、と言っていた私達ですが、再び歩き始めるとその勢いは一転。「もう早く帰らせてくれ」としか思っていませんでした。 結局、陣馬までは行かず、和田峠エスケープルートを選択。前回と全く変わらない結果(むしろ早めにエスケープしているので少し短い)になってしまいました。

この地点にてエスケープルートを選択。和田バス停に降りる。

日没前に無事に下山

無念の敗退です。しかし、登山は安全第一。命があれば何度もチャレンジできますが、死んでしまったらもう二度とチャレンジすることはできません。 体力の限界や天候を見極めて、撤退することも時には大切です。

総括・反省

今回の山行の総歩行距離は28.5km、行動時間12時間11分、獲得標高登り2320m、下り2513m、カロリー消費は3724kcalとなりました。 平均ペースは140%くらいで、他の人より平均して1.4倍ほど早く歩いている計算になります。

さて、今回の山行の反省点ですが、まず根本的に歩行速度が足りなかったです。140%なら常人よりは早いですし、12時間歩きっぱなしでこの速度は大したものですが、この距離を日照時間中に歩ききるにはさらに1.5倍早く歩く必要があります。正直今の体力じゃ無理です。 前回と体力が変わっているわけでもないし、早く歩けるようになったわけでもないのに、車で送迎してもらって、早く出発しただけで達成できるわけがありませんでした。とほほ。

そのため、根本的にこのルートを踏破するには、トレイルランの力が必須だと分かりました。 この日このルートですれ違った人もほとんどトレランでしたし、過去のこのルートを歩いている人を見てもトレランのようなペースの人ばかりでした。 次挑戦するときは、トレイルランの練習を積んでから行きたいです。

最後になりますが、今回の記事を読んで、登山をやってみたいと思う方がいらしたらとても嬉しいです。電通大にはなぜか徒歩が大好きな人がたくさんいるようなので、ぜひ登山にもチャレンジしてみてください。徒歩好きは登山との相性抜群です。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。それではまた。